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日本の建設業界における環境への取り組み

 現代の建設においては、省エネルギーや環境への配慮が重視されており、エネルギー効率の高い建物や環境負荷の低減を目指す設計や技術の導入が進められています。

 その中でも近年注目を集めているのが、二酸化炭素(CO2)を吸収する材料を活用し、製造時のCO2排出を実質ゼロにするコンクリートの開発です。*


*Public Relations Office,Highlighting Japan October 2021 ”二酸化炭素を吸収するコンクリート” © 2009 Cabinet Office, Government of Japan

日本の技術開発は世界からも注目を集めている 

 地球温暖化防止対策として、CO2排出量の削減が国際的な課題となる中、日本の建設産業はCO2削減のための様々な技術開発を進めています。その一つが、コンクリート製造に伴うCO2排出量の削減です。セメントは水と反応してコンクリートを固める重要な役割を果たしますが、製造する過程で多くのCO2を排出します。そこで、製鉄所や火力発電所で生じる産業副産物(高炉スラグや石炭灰など)を、セメントの代替材料として利用することで、CO2排出量を抑える取り組みが行われているのです。コンクリートは、水に次いで世界で2番目に消費されている物質とも言われており、その取り組みは世界からも注目されています。

 日本の建設会社や電力会社などが共同で開発したこの技術は、従来のコンクリートを製造する際に、1立方メートルあたり288キログラムの CO2を排出するのと比較すると、CO2の排出量低減とCO2の吸収によって、1立方メートルあたり306キログラムのCO2削減ができるのです。製造時のコンクリートのCO2排出量は、実質ゼロ以下となり、作れば作るほどCO2を減少させることができるというのです。

 これは、コンクリートの炭素化という新技術によるもの。炭酸化とは、セメントとCO2を反応させることで、コンクリートにCO2を吸収・固定させること。従来のコンクリートに比べて、セメントの使用量が半減し、加えて、固める際にCO2を固定化するので,CO2の削減に貢献できる。さらに,火力発電所の排ガス(CO2)を用いて固定化させる実証実験にも成功しており、排ガス中のCO2を直接固定化・削減することも可能になるのです。

 現在、この技術は、歩道と車道の境界ブロック、道路の舗装ブロック、河川護岸ブロック、集合住宅のバルコニーの天井などに利用されています。海外、特に地球温暖化防止の意識が強い欧米の企業からの関心も高く、製品の商品化と販売に関心を示している企業も出てきているといいます。

 中でもこの技術は、2020年12月に日本政府が発表した「2050年のカーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(経済産業省)で、「カーボンリサイクル」を実用化した事例に取り上げられるなどして注目を集めています。

 これまで日本の建設業界は、高度な技術力と品質管理の徹底で知られてきました。精密な工法や建築材料の使用、独自の建築様式などだけでなく、新技術の開発分野でも建設の常識を変える取り組みが進められているのは喜ばしいことですね。

 日本の建設需要は減少傾向にあるとはいえ、都市部では、土地の希少化と人口密度の高さから、都市再開発や高層ビルの建設が盛んに行われており、土地の有効活用や都市機能の充実が求められています。また、建築物はエネルギーの消費が大きいため、省エネルギーは特に重要です。先に述べた新技術などを用いて、断熱性能の向上、高効率な設備機器の導入、自然光の利用、エネルギー管理システムの導入など、様々な手法が考えられています。

 次回は、「エネルギー管理システム」についてお伝えします。