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前回のブログでは、防災に関するデジタル化の情報をお伝えし、災害の様々な局面におけるDX化について述べました。
そんな中、特に心配されているのは「避難所の運営」に関することです。これは、各自治体において、現状システム開発のノウハウや予算がないこと、人材不足などの理由からデジタル化が進んでいないことが懸念されています。
また業務の負荷が高いことも考えられ、避難者情報の管理(名簿一覧)、状況報告、ラピッドアセスメントなどによるニーズの把握・日報などの対応が、これまで紙をベースとしたアナログ対応であったことが大きな要因と考えられるでしょう。
こうした課題解決のためデジタル庁は災害対策のDX化を推し進めています。*1
これまでは、災害時に各避難所で取りまとめた避難者の情報を、自治体にFAXなどで報告しており、状況把握に時間も手間もかかる上に、手書きや電話連絡などのアナログ作業による伝達ミスも起きていたと考えられます。
もしこれらの作業がデジタル化され、一つのシステムとして機能すれば、個人が自身のスマホで事前に家族構成や健康状態を入力したものから、瞬時に把握することができます。データの取りまとめの必要もなくなりますし、どこの避難所が空いている、物資が偏っているなどの状況も広い範囲で把握することができるため、迅速な支援につながります。このように住民への適切な対応を実現するため、各自治体でシステムの実証事業が進められています。
情報として最も大切な健康状態には、無事か負傷しているかだけでなく、アレルギーや基礎疾患の有無、障害への配慮が必要など目に見えない事柄が多くあります。災害時であっても安心して身を置ける環境で過ごしたいという人は少なくないはずです。乳幼児の世話が必要な人の数や、ペットの同伴なども考えられ、避難所が個々に対応するのではなく、行政の対応の情報共有としてもデジタル化の必要性が高まるでしょう。
また、避難が難しく自宅待機を選択する場合の情報共有にもデジタル化は役立ちます。車中泊なのか、服薬が必要なのか、また分離避難をしていても、救援物資が届けられるよう、対応の強化にシステム化は必要不可欠となっていくでしょう。
*1 参照: “避難所運営をデジタル化へ、氏名や体調を自らスマホ登録…” 2022/09/18 読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/politics
情報をデジタル化することによって、直接の会話が減るなどコミュニケーションが希薄になる懸念や、利用者のデジタル端末に対する苦手意識をどう払しょくするか、システムの仕様が細かすぎて不便に感じる点があることも、今後の課題として考えていかなければなりません。ほかにも、避難者情報のデータ流出の心配、地震発生時、停電時でもインターネット・デジタル端末の利用に影響がないかどうか、実証事業や訓練が続けられています。
さらには別の側面から、避難所を居住環境としたときの視点に目を向けなければならないでしょう。これまでの避難所のイメージは、大人数が一所に集まってその場所を共有するので、プライバシーなく過ごさなければならないことや、硬い床の上に長時間居なければいけないなど、快適とは言い難い印象があったことでしょう。
しかし近年では、様々なグッズや設備が開発され、少しでも居心地よく過ごせるよう、開発が活発に進められています。例えば、段ボール製の組み立てベッドやパーテーション、超軽量のエアーマット、移動式のシャワールーム、世帯ごとに利用できるエアーテントなど、プライバシーと快適性に配慮した製品が多く生まれています。屋外では、公園の大型遊具が災害時には避難所の屋台骨になるという、建設プロジェクトから非常時を意識した造りのものもあります
被災状況を最小に留めるためにも、避難所を利用したい住民を増やしていかなければなりません。いかに快適にストレスなく過ごせるか、防災グッズや簡易設備だけでは補いきれない災害時の環境づくりは、デジタル化と建物や街づくりから災害と向き合っていく建設プロジェクトの二つの連携によって支えられてゆくでしょう。